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横浜地方裁判所 昭和50年(モ)1227号 決定

原告

神奈川県商工団体連合会

川崎民主商工会

原告

中尾佐太郎

被告

国外

右当事者間の当裁判所昭和四一年(行ウ)第一八号課税処分無効確認等請求事件につき、右原告等から証拠保全の申立をなしたので当裁判所は左の通り決定する。

主文

本件証拠保全申立を却下する。

理由

一  本件証拠保全申立理由の要旨は別紙記載の通りである。

一、当裁判所の判断

証拠保全の要件として民事訴訟法第三四三条に定める「予メ証拠調ヲ為スニ非レハ其ノ証拠ヲ使用スルニ困難ナル事情アリト認ムルトキ」とは、これを証人についていえば、当該訴訟事件につき原告又は被告の一方もしくは当事者双方が、受訴裁判所に対して、証人として取調べるべきことを、既に申出をなし、または当該訴訟手続追行過程においてやがて申出をなすべく予期している、訴訟当事者以外の特定の第三者につき、将来これを受訴裁判所に呼出し、またはその所在に臨んで、証人として現実に尋問することにより、その経験事実の陳述をなさしめる機会が絶対的に消滅し去るか、然らざるも右機会の把捉が著しく困難ならしめられる不定期間の障碍の生ずべきことが、既に現在において客観的に蓋然視せられる事態が存在することを指すものと解せられるのであって、将来当該特定第三者を当該訴訟事件につき証人として現実にこれを尋問することによって聴取し得べき右証人の供述内容の係争事実に関する証明力の程度並にその証拠価値の消極的変動(漸次的減少と消滅)に関する現在における予測の如何の如きは、毫も右第三者を証人とする証拠保全の要件をなすものでないことが明かであるところ、原告が本件証拠保全申立につき、その理由として主張するところは、到底上記民訴法所定の要件を充足するものとは認めることができず、またその他右法定の要件の存在を肯認するにつき何等の主張疎明も存しないから、右申立はこれを却下すべきものとして主文の通り決定する。

(裁判長裁判官 日野達蔵 裁判官 吉岡浩 裁判官 松崎勝)

証拠保全申立理由

原告中尾によって、所得税の確定申告がなされた右年度以来、一〇年の年月が経過し、更正処分が、右鈴木らによってなされてからも九年が経過した。出訴以来、約九年が経過している、この間、原告らより屡、証拠調べをなす旨申出たが、裁判所は多忙等の理由で、一切之を行なわない。

右鈴木三男については、被告らよりも証人として申請されているものである。(被告証拠申出書(四七、九、一一付))

かくては、証拠調べが何時の日にか行なわれる予測は全くなく、人間の記憶は急速に一〇年以上をたてば喪失するものであるから至急、単独裁判官によって、右鈴木らの証拠調べをなし、証拠保全の措置をなされるべきである。

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